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【新刊本】アンダーグラウンドビートルズ~ビートルズエピソードの集大成/藤本国彦+本橋信弘 著 [本]

私にとって始まりから終わりまで衝撃の連続で綴られた内容であった。

 

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著者のひとり本橋信弘氏は高田馬場界隈の裏事情を著した単行本『高田馬場アンダーグラ

ンド』で出会って以来目が離せない、とても観察眼と記憶力に秀でた作家であると注目して

いた。

その氏がビートルズマニアの第一人者として名高い藤本国彦氏とタッグを組んで二人の対談

をベースに出版された本書はビートルズのメンバーやそれを取り巻くスタッフの方々の数限

りない驚くべきエピソードがぎっしりと詰まっていた。

エピソードオタクの私にとってはおよそクリスチャンが聖書を崇めるがごとく本書に没頭し

てしまった。

冒頭からいきなり強烈なインパクトが披露される。

〔オカッパくずし〕・・1963年11月20日毎日新聞が夕刊で初めてビートルズの記事を掲載し

ときロンド駐在の小西記者がタイトルとして使った単語だ。

本書の中で当時の記事がコピーとなって掲載されている。

マッシュルームカットが広まる前のことだったのだろう。

初めて聞いた名称だがなんか言い得て妙なネーミングだ。

少し話はそれるが、60年以上も前のこの記事の存在を当時小学校1年生だった本橋氏はリア

ルタイムで出会いしかも今の今までほぼ正確に記憶していたという本題から派生した本橋氏

自身のエピソードに私は驚愕した。

小学1年で新聞の活字を読むというのは盛っているのではないかと突っ込みたくなるところ

だが、氏によれば『少年サンデー』などの漫画雑誌には漢字にルビが振ってありそれを毎週

欠かさずに読んでいたので色んな漢字を自然と覚え、そして家で取っていた毎日新聞に目を

通すようになったそうである。

私自身が幼稚園時代からやはり『少年サンデー』のおそ松くんやオバケのQ太郎の愛読者だ

ったのでその部分はとても共感を覚えた。もっとも自分には氏のような膨大な記憶力や緻密

分析力を武器とする才能は微塵も持ち得ていないが。

 ビートルズのメンバー編成に係わるエピソードも満載だ。

ドラムのリンゴ・スターが加わる前にピート・ベストなるドラマーが在籍していたが、後年

彼は『シュガー・ベイビー・ラヴ』という1970年代にスマッシュヒットした曲に係わってい

たという数奇な運命なども解説されている。

 歌詞に係わるエピソードも枚挙にいとまがないが一番い印象深かったのは『シーズ・リー

ィング・ホーム』だ。

名盤と言われた『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に収めら

れている一曲だがとても美しいメロデイが印象深くてビートルズの中でも最も好みのうちの

ひとつでもある。

ポール・マッカートニーが少女が家出したと言う記事に触発されて書き上げたものだがその

少女は数年前にポールが審査員を行ったテレビのダンス番組で優勝していた、というもの。

こんな作り話みたいな実話には陳腐だが「事実は小説より奇なり」がとてもよく似合う。

 妻が日本人のヨーコ・オノであるジョン・レノンの日本びいきエピソードでは、ジョンが

道に魅せられ道場見学をしたばかりか乱取りまで体験した実話が最も興味を引いた。

師範の娘で小学校5年のノリコちゃんはジョンの乱取りが「ダンスを踊っているよう」と見と

れていた。

気をよくしたジョンは40枚ものサインを道場の生徒たちに書いたのみならずその2週間後も

当時2歳だった息子のショーンを連れて再び訪れた。

ショーンの遊び相手はノリコちゃんが担った。

そこでジョンは必ずまた帰ってくると約束した3年後、凶弾に倒れ望みは叶わなくなる。

その後中学で柔道を始めたノリコちゃんはソウル五輪で銅メダリストとなる・・・

泣かせるエピソードである。

しかし本橋=藤本の対談には続きがある。

本橋=ジョンが生きていたら何かドラマがうまれたでしょう、ジュウドウと少女の歌とか

藤本=ヘイ・ジュウドウと言わせたい流れですね(爆←ブログ筆者の加筆)

*Hey Judeはポールですから・・

ちなみに藤本氏のダジャレはこのほかにも頻出しています。


と、まあほんの一部を取り上げたがこのほか公序良俗に反するエピソードも満載でとても

読み応えがあった。

理屈っぽいたとえになるが私は『ビートルズマニア』には遠く及ばず『ビートルズの曲マ

ニア』のビギナークラスである。

そのようなクラスを称する方々は老若男女相当数にのぼるのではないかと推察するが、本

書はそんな方々にもぴったりとはまると思うので自信をもってお薦めしたい。


アンダーグラウンド・ビートルズ

著者 藤本 国彦・本橋 信弘

発行所 毎日新聞出版

初版  2024年6月5日

 

 


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