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【ラグビー】あの栄光のワールドカップ2019の舞台裏〘おっさんの掟〙小学館新書 [本]

2022年2月1日発売 〘おっさんの掟〙〈谷口真由美著/ 小学館新書発行〉を読みました。

副題が“”「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」”とありますので

かなり刺激的でそそられます。


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国内では先月新たなラグビーリーグ〔リーグワン〕がスタートしたばかりであり、そん

な注目かつ重要な時期に、ともすれば水を差すような書物を出版するのが  一時とは言え

日本ラグビー協会に身を置いた人物であることに違和感を抱きつつもやはり内情は知って

おきたかったので怖いもの見たさ的感覚で、人から教えられたその日に即買い、即読みし

ました。

ラグビーといえば「にわかファン」という単語が流行語になったのも振り返ればコロナ禍

前の2019年、この年は史上初めてアジアで行われたワールドカップ日本大会で予想を大

きく上回る日本の信じられないような活躍で大盛り上がりとなったのでした。

いっぽう国内でのラグビー競技は<トップリーグ>というプロアマ混在の選手からなるリ

ーグ戦が2003年から開催されてきました。

プロやアマの選手が混在するのは当事者たちにとっては人生設計の上でとても合理的な

制度である反面世界のラグビーから見れば長年弱小チームであった日本がラグビーワール

ドカップで好成績を持続してゆくためにはやはりサッカーのプロ化を見習って完全なプロ

リーグの発足が必須との考えから、生みの苦しみを経てスタートとなったのが〔リーグワ

ン〕と言えるでしょう。(なおここでの詳細な説明は割愛しますがリーグワンにおいても完

全プロ化による選手制度には至っておりません)


   しかしスタートにこぎつけるまでに紆余曲折があったのです。

おおまかに経過をたどると

まず日本ラグビーに長く君臨してきた森喜朗元名誉会長が2019年に突然自ら辞任を告げ

後任として早稲田大学の後輩であり、母校やトップリーグ〈サントリー〉及び〈ヤマハ〉

の監督として優勝を遂げるなどの実績を有した清宮克幸氏を引っ張り込んでからプロ化

の動きが急展開します。

その清宮氏が引き込んだのが本書の著者<谷口真由美氏>でした。

氏は人権問題に造詣が深くその方面における法学者としての大学の(准)教授という職につ

きながらも某人気テレビ番組のコメンテーターをもこなす人気と実力を兼ね備えた人物です。

しかしラグビー新リーグ発足に肝いりで引っ張られた清宮氏がややもすると突如そのメン

バーから外され、替わりに上記の谷口氏が新リーグの設立準備委員長に任命されます。

それから新プロリーグスタートが2022年1月と決定したおよそ半年前の2021年7月、新

プロリーグの1部、2部、3部グループに所属するチーム発表がなされたときに事件が世間

に表面化したのです。

すなわち設立準備委員会が進めて決定づけたグループ分けに対して森重隆現ラグビー協会

会長自らが手直ししてその結果1部と2部のチームを入れ替えた、と発表したのです。

当時のマスコミではそれがどこのチームであるかは表沙汰されなかったのですが、私は有

力筋からトヨタと近鉄を入れ替えたのだとの情報を入手し、そのときはたいそう驚愕した

ものでした。

そしてこの本のもっとも関心が高まる部分であるその事実もまさにその通りのことが実名

で書かれていました。

谷口氏は本書の中で「清宮にいさん」と親しみを込めて記しています。それは他でもなく

谷口氏が清宮氏のことを強引さが気がかりだが強力なリーダーシップで物事を進める姿に

尊敬の念を抱いていたからです。

そんな強引に進める清宮氏の仕事ぶりを谷口氏自身がもっと相手とのコミュニケーション

をとるようにたしなめる発言も登場しています。

しかしながら谷口氏がトップとなり新リーグのグルーピング作業に取り掛かったところの

集計で2部がトヨタで1部に近鉄という結果が出たときにはコミュニケーションをとらず

強引に進めています。

トヨタといえば人気、実力とも申し分のないチームです。対して近鉄はその両者において

トヨタに見劣りするのみならず実は谷口氏の実父は近鉄ラグビー部の出身で谷口氏自身も

幼少のころは同チームの合宿所で育ったという経歴の持ち主なのです。

こんな背景を抱えて仮に集計結果が上記のようなことになったとしたらコモンセンスなら

最終責任者たる森重隆会長の耳に入れるとか、少なくともいわゆる情報提供を行いながら

変な意味ではない「根回し」を行うところでしょうが、それをせず妙な部分で法学者とし

ての矜持がそのような行動に至らせまいとしたのか自分の出した結果を押し通そうとした

のだから紛糾するのは火を見るよりも明らかなことでしょう。

そういう本人のマネジメントスキルの欠如についてはいっさい触れることなく、ただ単に

ラグビー協会の罵詈雑言(であると私には感じました)を並べて、ただしそれが森喜朗氏の

女性蔑視に見られる時代の潮流に乗った問題をラグビー協会の体質と評価してのすり替え

として結んでいる本書に対して少なくとも本人にはラグビー愛がおよそ感じられないのが

とても残念でした。



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